「トワイライト」シリーズ5作品から学ぶ、甘すぎる“理想の恋愛”

トワイライト・サーガブレイキングドーン1

「トワイライト」シリーズをぶっ続けで見てみたが、ホント、少女漫画みたいな話である。原作がYA小説だからどちらかというと折原みとを思い出しますが。
ヴァンパイアとの禁断の恋を描いているのですが、全員美青年&美少女なのがスゴイ。あと、このシリーズで一番出世したのはアナ・ケンドリック(端役)というのも感慨深い。ちなみに、ウォーキング・デッドでロジータ役の子も同じく端役で出てます。

それでは、シリーズ毎に気になったところを振り返る。

①「トワイライト~初恋~」

トワイライト初恋

「これ以上好きになると、君の命まで奪ってしまう」

このシリーズの導入部にしか過ぎないのですが、ひたすら甘ったるいお話。
美少女転校生が出会った謎多き学園の“王子”は、実はヴァンパイアだった!という展開のみです。主人公のベラは、謎の美青年・エドワードに冷たく突き放されたり、突然すり寄られたりですっかり心を揺さぶられ、ポーッとなります。「俺に近付くな」と言いながらも寄ってきたり、いいムードになっても突然自分の体をビターン!と壁に叩きつけ(天井に貼りつく忍者ハットリくんと酷似した動作) 「ダメだ!」と叫んだり、まあ焦らしに焦らすんですね。結局両思いになるのですが、エドワードは交通事故に巻き込まれそうになったベラを驚異的なパワーで救い、あっさりと正体をバラします。
特筆すべきは「ベラを背負ったエドワードは森を走り回り、木を駆け上る」というシーン。シュタタタじゃないよ。また、家族の野球大会がどう見ても「地獄甲子園」だったのも笑いどころかもしれない。
ラストは賑やかなプロムナイトを抜け出し、なぜかライトアップされているのに誰もいない東屋でダンスをしながらチュッチュします。

・美青年に見初められるウブな少女
・もう、アイツは私のことが好きなの?嫌いなの?→やっぱり好きなのね♡
・プロムナイトでロマンチックな体験しちゃう♡
というのがアメリカ女子の定番なのでしょうか。日本にプロムナイトなくてよかったわ。

②「ニュームーン/トワイライト・サーガ」

ニュームーントワイライトサーガ

「この愛を貫く。」

前作ではエドワードをひたすらフューチャーしてましたが、ここでもうひとりの主人公であるジェイコブが登場します。ベラの幼なじみであり、年下のワイルド系イケメン。しかも狼男でエドワードとは敵対する派閥である、というまさに満貫な設定であります。
エドワード:リッチなイケメン。繊細で王子様然としている。普段はおとなしく優しいが、ベラのことになると見境がなくなることもある。ヴァンパイア。
ジェイコブ:ベラの幼なじみ。ピュアな年下青年だったが、狼男として目覚めてからはワイルドになる。ベラのことを熱烈に愛し続け、暴走することもある。が、エドワードとの仲を引き裂くような真似はしない。
というように、タイプの違う2人の異性に挟まれ、自分を巡って喧嘩されるという軸があります。

この作品で気になったポイント

・ベラ、彼氏の写真を隠し撮りして自分の写真とくっつけてアルバムに保存するという重たい女ぶりを見せる
・エドワード、突然失踪。ベラは彼を捜し回るが、倒れているところをよくしらない上半身裸の男(ジェイコブの知り合い)にお姫様抱っこして運ばれてくる。上半身裸ってさあ……。
・ジェイコブに散々好意を寄せられるが、ベラはかわす。
・同級生にもデートに誘われるが、「じゃあみんなで行こうよ」と言い出す鈍感ぶりを見せるベラ。断る口実にしているというのもわかるのですが、半分素と思わせるやりとりもあります。
・告白されるもジェイコブをふってしまうベラ。
・わかりやすくグレて、髪を切ってタトゥーまで入れちゃうジェイコブ。と思ったら、彼は狼男としての血に目覚めたのだ!
変身する瞬間、上半身の服はビリビリになっても下半身のパンツは絶対に破けない。鋼鉄のパンツなのだろうか。
・オオカミ化した人狼、かなりデカイ。「ネバーエンディングストーリー」の竜を思い出した。
・狼族とヴァンパイアは天敵であることがわかり、困惑するベラ。どうでもいいが、狼人間とヴァンパイア以外はいない世界なのかしら。妖怪大戦争みたいにはなりませんでした。
・エドワード自身は生きていたもののベラが死んだと勘違いして(死んだのはジェイコブの親族)自殺しようとする。
・ベラとエドワードの姉のアリス、エドを止めに急ぐ。まあ、当然ギリギリで間に合うのですが。
・ジェイコブはエドとの交際にまだ反対しているが、ベラとエドは強い絆で改めて結ばれる。
・エドワード、ベラにお花畑でプロポーズ。

ジェイコブが優しげな幼なじみからワイルド系の男に急変して、とにかくベラに迫りまくるという「ダメよ、私には好きな人がいるの」的展開が中心なのですが、その一方で、早合点で自殺しようとするエドのうっかりさん☆もすごいですね。

・彼の仲間からは受け入れられているけど、やっぱり私は人間だから蚊帳の外(しょんぼり)
・大好きなカレを裏切れないけど、幼なじみの彼の激しい愛に揺らがなくもない
・大切な幼なじみとカレに挟まれて、私はどっちを選べばいいの(若干のうっとり)
・高校生だけど、彼からプロポーズされちゃった♡しかも彼と私しか知らない秘密のお花畑で♡

と、2人の間で揉まれる主人公気分を味わえるエピでもあります。ただし、エドが出てこないうえ、「おいおいそりゃあねえだろ」という勘違いもしますので、なんだかオマヌケとしか思えないところもあります。

③エクリプス/トワイライト・サーガ

エクリプストワイライト・サーガ

「戦う、愛のために──」

このエピでは、前作で対立していたエドワードとジェイコブが協力してベラを守るというウットリ展開が続きます。ケンカばっかりしていた2人が、命がけでヒロインを守るわけです。

この作品で気になったポイント

・エドとベラ、結婚を決めてイチャつきまくり
・ジェイコブからも熱烈なアプローチが続く
・エドのお父さんのカーライル、だんだんカズレーザーに見えてくる
・ジェイコブ、ベラを自分の運命の相手と信じて疑わない。いきなりベラにキスすると、彼女はグーパンで応酬。結果、手を大怪我するという恋愛コミック的展開。
・1作目・2作目とカレン家と揉めていたヴァンパイアの生き残りが、人間をヴァンパイアに変えて軍隊を作り、ベラを襲う計画を立てる(エドワードへの見せしめとして)。エドワードの家族は、ベラを守ることに尽力する。
・ベラを敵視していたロザリー、闘い慣れしているジャスパーの過去が明かされる。
男たちに裏切られ殺され復讐するところまで堕ちるも、恋人・エメットのおかげで立ち直ったロザリー。
利用され、仲間を殺したこともあったが、恋人・アリスのおかげで立ち直ったジャスパー。
生き方を変えられることへの恐怖を語りつつも、ラブラブぶりをアピールされる。
ちなみにエメットはガチムチ系、ジャスパーはエドよりもルックス甘めだけど強いというギャップ系のイケメンであります。
・前作から、やたらとお姫様抱っこで運ばれるベラ。
・父親にエドとの関係を心配されるも、自身が処女であることをカミングアウトするベラ。
「エドワードも悪い奴じゃないナ」とパパも安心。
だが、吸血鬼と人間のセックスは危険すぎる。ベラは死ぬかもしれない!と、ベラに誘われてもひたすら断るエドであります。
・敵からベラを守るため、エドとジェイコブも協力する。雪山に避難するも、凍え死にそうな彼女を裸で温めるジェイコブ(エドワードは吸血鬼なので、体温が低いから)。
「ベラのことがなかったら、俺達友達になれたのかもナ」と、これまたベタな展開です。
・だが、感情的なジェイコブに振り回されるベラは、彼にキスをして黙らせる。それをエドに目撃される。
・ベラを巡って戦いがあるが、あっさり勝つ。だが、ジェイコブだけ大ケガしてしまう。
・とはいえ、ベラはエドと結婚する気満々。
ヴァンパイアの世界にどうして入りたいのかを聞かれたベラは、「自分のいるべきところだから」と答える。

あえて語尾を「ナ」にしているのは、昭和を感じたからです。頑ななまでにベラに貞節を守らせるエドですが、それは「ヴァンパイアとのセックスは激しすぎて人間は死んじゃうから」という身も蓋もない理由。ただ、ティーンには「結婚するまで許しちゃダメよ♡」という意味もあるのかもしれませんけど。

・断っても断っても諦めないジェイコブに、好きな人と両思いになっても自分のことを無条件で許し守ってくれる人が欲しいという女性心理の表れが……(嘘)
・自分を好きな人たちが和解して、協力して自分を守ってくれる。
・「私のいるべきころはここじゃない。ヴァンパイアの世界よ!」というところにキモがあるような気がする。稀有な恋愛がしたい、稀有な存在になりたいという思春期特有の強烈な自己顕示欲が隠れているのかもしれない。

さて、残り2作はまたガラリと作風が変わります。正確には4部作であり、残り2作は前後編扱いだと思えばいい気がする。

④トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part1

トワイライト・サーガブレイキングドーン1

このエピは、5作ある中でももっとも甘ったるく、それでいて苦々しいお話です。ぶっちゃけ、なんでコレ見なきゃいけないのよ……という気もするくらいのお話ですが、仕方なし。というのも、前半はエドとベラの結婚式・新婚旅行・初夜の垂れ流しだからです。終始、目を剥きながら見るっきゃない!

この作品で気になったポイント

・ジェイコブ、ベラから結婚式の招待状をもらってショックで森を走り回る。
・エドワードやその家族は基本的に森の動物の血を吸って生きているみたいなんですけど、そもそもエドは人の血を吸っていた時代も、殺人鬼など悪い人間しか殺さなかったことが強調されます。「だからあなたはいい人♡」ってなるものなのか??
・ベラ、死体の山の上で結婚式をする悪夢を見る。「パフューム」みたい(あっちは大●交だけど……)
・オシャレなドレスにオシャレな結婚式にイケメンの旦那様なんてステキ~♡って言えばいいのかこの野郎
・ジェイコブ、結婚式にギリギリやってきて遅ればせながら2人を祝福する。
・当初の約束を破り、人間のままエドワードと初夜を迎えるベラ。初夜の前にハミガキ、脱毛を大慌てでこなします。
・マッパになったベラ、マッパで海に浸かるエドワードのもとに歩んでいく。大きな月がマッパ2人を照らします。ラッセンの絵みたいでキレイ~(白目)
・セックス描写が唇とか首筋とか腹とかをパッパカパッパカ切り替えて移す演出なのが、なんだか、クルものがある。ティーン向けだから仕方ないが、複数回あるシーンが全部コレなんだもん。
・激しい一夜を過ごした後、本当に部屋がグチャグチャになっているというのは笑うところでしょうか。
・延々と女子の理想のハネムーンを見せられる。チェスしているエドとベラ。日本人夫婦なら将棋をやるところでしょうか?
・唐突に妊娠が判明するベラ。ヴァンパイアと人間の間の子だから、成長も早い。しかし、そのせいでベラは死ぬかもしれない!
・命を選ぶか、子供を選ぶか?
・ジェイコブは仲間を裏切ってまで、ベラを守ることを決意する。ベラ、男の子ならジェイコブとエドワードの名前を混ぜてつけるとか言い出す。もっと堅実な名前にしてあげて!
・ベラ、産気づくがうまく産めないため、エドワードが腹をさばいて子どもを取り出す。しかも麻酔なし。
・ジェイコブ、生まれた娘を見た瞬間、自分の運命の相手は彼女だと確信。「刻印」(人狼は運命の相手を見つけたらこれをして、一生その相手を守る)して、仲間の攻撃を回避し、エドワードやベラとその家族を守る。
・ベラ、子供を産んでから眠り続け、目を覚ました時にはヴァンパイアになっている。

結婚式と新婚旅行というロマンティックなシーンから、強烈な出産シーンへと続き、まさに「女の花道」であります。旦那に腹を裂かれるという体験、これも思い出の1ページか。

・理想の結婚式&新婚生活に史上最強にウットリ
・しかし、妊娠してガリガリにやせ細るベラにこちらも身が細る思いであります。
・とうとう彼の仲間になったわ!

と、ベラが吸血鬼になって家庭を持ち、母になる。そして最恐にして最凶の敵と戦うことになるというのがラスト1話です。

⑤トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part2

トワイライト・サーガブレイキングドーン2

「史上最強のヴァンパイア・ラブファンタジー 全てをかけて、新たな命を守る
ついに訪れる、壮大な“夜明け” 『トワイライト』完結編」

ラストは、生まれてきた娘をエドワードやベラ、その家族たち、さらにはジェイコブ率いる人狼たちが守るというお話。

今までの敵は
1作目:流れ者の乱暴なヴァンパイア
2作目:戦闘シーンはあるが、はっきりとした敵は登場せず
3作目:1作目で死んだヴァンパイアの恋人が率いるヴァンパイア軍
4作目:ジェイコブが抜けた後の人狼たち。ただし、ほとんど戦わずに和解
そして5作目にして、ヴァンパイアの統治組織が敵として立ちはだかるのであります。

5作目は戦闘がメインです。

この作品で気になったポイント

・ベラ、目を覚ます。ヴァンパイアとしての生活に慣れていく
・その一方で、娘はガンガン成長していく。
(あとでおよそ7年で成年になると明かされる)
どうでもいいけど、娘の顔がちょくちょくCGなのが怖い。なんでなんだろう。
・ここでもうっとりポイントが……なんと、新居をプレゼントされます。森の中にあるかわいいおうち♡その中で服を裂きながら激しくまぐわう2人。そしてまたパーツのスライドショーです。
・娘の存在がヴァンパイアたちを破滅させるかもしれないと知った組織が、彼らを殺しにやってくる。エドワードたちは自分たちの証人を集める。みんなヴァンパイア仲間ですが、なかには特殊能力持ちの仲間も。電流を出せる者、火や水を操れる者、幻覚を見せられる者など。もうX-MENっすね。
・組織との対決シーン。ベラは気合の入った工藤静香のような前髪で登場。
・組織はゴシック系、エドたちは黒で統一した私服。なんとなく、1つの色で統一するというと合唱コンクールを思い出す。
・激しい対決で、エドワードの父やジャスパーが死ぬ。しかし組織も壊滅状態に……という予知夢を見せられた組織のボス(未来が予知できるアリスが、心を読み取れる彼に見せた)。結局、自分が死ぬという結末を回避したいボスは引きさがり、和解。
・ラストは思い出の花畑(こいつら、どんだけ花畑にいるんだよ)で、なぜかベラがエドに今までの回想(というか映画の名シーンの羅列)を見せる。

なお、ジェイコブは数年で美少女に成長したベラとエドワードの娘と結ばれるという衝撃展開。「幼いころから自分を守り続けてくれた年上のナイトと結ばれる」というのもまた、女子の夢なのかもしれません。
また、ベラもスーパーパワーに目覚め、仲間を守るための能力を得るというのもすごい。ヴァンパイアと人狼に見初められ、運命の子供を身ごもり、自身もヴァンパイアになり、超能力も得られてかつスゲエ美人というハイスペックだかなんだか混乱します。

まるでケーキバイキングのように女性の夢が詰め込まれているシリーズであります。
この映画の特筆すべきポイントは、恋愛においても、自己においても特別でありたいというもの。しかしながら、そこには「仕事」という概念はないのです。この映画でちゃんと働いている描写があるのは、ベラの父親とエドワードの父親(血はつながってないが)くらいでしょうか?ただ実直に働くベラの父と、実態はよくわからないけど高スペックなことはわかるエド父を同列では語れないわけですが。そもそも、エド父が医者なのは、無茶な戦闘やベラの出産に対応できる能力の持ち主を配置する必要があったからでしょう。つまり、バリバリに働くキャリアウーマンはこの世界ではほとんど登場しません。必要とされていないからです。愛され、求められ、守られて18歳で結婚して妊娠、出産するという“ある種”の理想の生き方がここにあるのです。
まーヴァンパイアだから働く必要がないってのもわかりますが、ここまで恋愛至上主義だと「スゲーな」という気持ちが先に来てしまいますね。

とりあえず、旦那にお腹を裂いて子どもを取り上げられるという体験はしたくないっす。