「6才のボクが、大人になるまで。」

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2014年の映画「6才のボクが、大人になるまで。」を見ました。
なんだこの邦題とは思います。原題は「boyhood」であり、直訳すると「少年時代」です。こっちのほうがわかりやすい。せめて長ったらしいのはサブタイトルにしてほしかった。
実際に子役や俳優が成長していくなか、リアルタイムで成長を追いつつストーリーを構成していったという手法が話題になりましたが、ストーリーはそこに頼っていないところがいいね。
手法は面白いですが、扱っているテーマは普遍的であります。個人的には幼少期の凄惨な体験に震えました。

あらすじ

「スクール・オブ・ロック」「ビフォア・ミッドナイト」のリチャード・リンクレイター監督が、オーディションで選ばれた6歳の少年エラー・コルトレーンを主演に据え、彼の12年間の成長と家族の変遷の物語を、劇映画でありながら実際に12年間をかけて撮影するという画期的かつ大胆な手法で描き出し、登場人物に刻まれるリアルかつ自然な時の流れまでをも鮮やかにフィルムに焼き付けた感動の家族ドラマ。共演は両親役にパトリシア・アークエットとイーサン・ホーク、姉役で監督の実の娘ローレライ・リンクレイター。

テキサスの田舎町に住む6歳の少年メイソンは、母のオリヴィアと姉サマンサとの3人暮らし。父親のメイソン・シニアは離婚してアラスカに放浪の旅に出てしまった。シングルマザーとなったオリヴィアは、キャリアアップを目指して大学への入学を決意し、メイソンとサマンサを連れてヒューストンに移り住む。そこで多感な思春期を送り始めたメイソンは、やがて母の再婚や風来坊の父との交流、そして初恋と、様々な経験を重ねていくが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=349849

ネタバレ

主人公のメイソンは、ドラゴンボールを見たり(寝具もDBなのがすごい)、お姉ちゃんとケンカしたり、下着カタログで興奮したりしている普通の子ども。
お母さんのキャリアアップのために、姉弟は引っ越しをすることになります。

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離婚したお父さんと再会。自由人なパパは、お母さんを怒らせてばかり。復縁を期待していた子どもたちは、その望みが消えたことを悟ります。

大学で勉強を始めたママ。
教授と恋に落ちて結婚し、兄弟が4人になります。(男男女女)
ハリポタに夢中になったり、わりと贅沢な遊び(ゴルフとか)に興じる親子。

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アルコールにおぼれていく義父。
義父とそりが合わず、髪を切っている途中で坊主にされて怒るメイソン。
しかし義父がママに暴力をふるったり、いなくなったママを探して義父が子どもを乗せた車をそのまま逆走させたりと、すさまじい展開が続きます。

自分の子どもだけを連れて逃げるママ(当たり前だが、親権がないから)。
義理の兄姉とは、ここでお別れです。

パパには新恋人ができているようです。
ママは教授になります。
そして生徒(夜学みたいな感じなので、大人の生徒もいる)と3度目の恋……?

けっこう時が飛びまして、ややちゃらくなって酒やクスリの味も覚えたメイソン。女の子ともキスしています。ママは再婚しており、新しい旦那は警官になっています。
15歳の誕生日にはパパの新しい奥さんや子供とも一緒に過ごし、じいちゃんにショットガンをもらうアメリカ人らしい展開もあります。
カメラマンになりたいという夢を見つけたメイソン。しかしカメラにものめりこみすぎています。
お姉ちゃんの大学に遊びに行った時には、彼女とベッドインまでしちゃいます。
ですが延々不安を語る彼のもとを恋人は去っていき、卒業。
進学へ。

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家族で食事をしていると、ママのもとに人がやってきます。
かつてママが「勉強したらいいのに。あなた頭がいいから」とアドバイスした配管工のおじさんが、その助言通りに行動してキャリアアップをしたという展開。レストランの店長にまでなったこのおじさん(かつてはカタコトだった)は、ママにお礼を述べます。
この不思議な縁というのは、普通の映画だったら「洒落た展開だね」となるかもしれませんが、この映画では本当に数年経ているのかと思うとこそばゆく深い感じがするのも事実。

大学に入学した彼は、同室になった友人とその女友達と一緒にドライブ&ハイキング。「なんでもできそうな気がする」ような高揚感と、大人になったという実感を噛みしめ、彼は子ども時代に別れを告げるのであります。

それにしても、イーサン・ホークのビジュアルがなかなか変わらないところにびっくりしました。

こういう手法は面白いですね。 監督の継続力に圧倒される映画でもあります。