「トガニ 幼き瞳の告発」

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今回は、かなりざっくりとしたネタバレです。
2011年の韓国映画「トガニ 幼き瞳の告発」。

①聴覚障害を持つ女児・男児への性的虐待
②教師採用試験における癒着
③権力者と裁判官、弁護士、検事の癒着
など、非常に許しがたいことばかり描かれているのですが、驚くべきことに実話をベースにした映画なんですって。

個人的には、児童に性的虐待をくわえている校長と行政室長(日本でいう事務室長みたいな感じ?)の双子のおっさんのビジュアルがすごかったです(1人2役。「殺し屋1」の松尾スズキさんを思い出した)。

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あらすじ

韓国の聴覚障害者学校で起きた実在の性的虐待事件を基にしたコン・ジヨンのベストセラー小説を映画化した衝撃の社会派ドラマ。校長や教師たちによるおぞましい虐待に加え、理不尽な司法制度にも翻弄される幼き児童たちの悲痛な運命を力強く描き出す。本作の公開によって韓国国内で改めて事件にスポットが当てられ、事件発覚後も存続していた学校の閉鎖や性犯罪に関する法改正が実現するなど、社会的にも大きな反響を呼ぶこととなった。主演は「あなたの初恋探します」のコン・ユ、共演に「人喰猪、公民館襲撃す!」のチョン・ユミ。監督は「マイ・ファーザー」のファン・ドンヒョク。

深い霧に包まれた田舎の聴覚障害者学校に美術教師として赴任したカン・イノ。しかし着任早々、怯えたような児童たちの表情から学園内に漂う不穏な空気を感じ取る。ある日、一人の女子児童が女寮長によって顔を洗濯機に押しつけられている現場を目撃したイノは、彼女を保護して病院に入院させる。そして、偶然知り合った人権センターで働く気の強い女性ソ・ユジンに連絡を取る。やがて、児童たちが校長をはじめとする教師たちから日常的に性的虐待を受けている実態が判明。イノとユジンはマスコミを利用して校長たちを告発、ようやく警察が動いて逮捕にこぎ着けるのだったが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=342513

ネタバレ

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新任教師、イノは聴覚障害者学校に赴任することになりますが、そこで目にしたのは恐ろしい光景。
日常的に暴力が振るわれ、特定の子どもたちは傷だらけ。しかも、彼らは性的虐待の対象者でもあり……!

イノは人権センターで働くユジンの助けを借りて、彼らを告発。

韓国でそれがメジャーなことなのかはわかりませんが、教師になるにも口利きが必要で、お金を渡して貢物もして……など、いろいろ尽くさなきゃいけないそう。
暗にそれを匂わされたイノも、母に借金を頼んでまでお金を工面して、一度は暴力にも眼をつぶろうとします。

しかし、性的虐待が存在すること。
怖がる少女・ヨンドゥを追いかけて、女子トイレにまで侵入する校長。
(なお、この時にイノはたまたまトイレの外にいたが、行政室長にごまかされ、結果として彼女を“見殺し”にしてしまった)
知的障害がある女の子・ユリをお菓子で釣り、性的虐待に及んでもいます。
ちなみに校長が隣の個室から少女の隠れている個室を覗きこむシーン(上から顔を出して覗く)は、「呪怨」にも似た場面がありましたね。

また、ショタコンである男性教師は幼い兄弟を自分の家に連れ込み、順番に乱暴。逃げた弟は電車に轢かれて亡くなり、その事故は隠蔽。
残された兄・ミンスは、ひたすらこの教師に殴られ、いたぶられ、性的虐待を繰り返されています。

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これらの事実を知り、見過ごすことができないイノ。マスコミの力を借りて、この3人の訴えをもとに裁判が起こされます。
裁判にはたくさんの人が訪れます。校長、行政室長、男性教師が逮捕されますが、校長の養子であり愛人でもある(!)女性職員がおり、こいつがまたクセモノなんですね!この職員はヨンドゥをボッコボコにしばき倒して暴力をふるっていたのですが、この暴力の原因が「校長をとられた女の嫉妬」だったのには驚いた。

そしてこの女が手をまわし、少年少女たちの両親や祖父母たちに「示談」を要求するのです。
そもそも、彼らの親も障害を持っており、生活苦に悩む祖母が促されるままに示談に応じてしまったため、ミンスの裁判は終了してしまいます。

また、検事が彼らを裏切り、この犯罪者たちに下された判決はあまりに軽いものになってしまったのであります。

「どうしても許せない」「法が裁かないのならば、僕が殺してやる」と男性教師を殺しに出て行ってしまったミンス。
イノは間に合いませんでした。ミンスは男性教師を刺し、本人も電車に轢かれて命を失います。
(男性教師の家が線路沿いにあり、逃げる教師を追ううちに、その線路上で揉みあう形になった)

ミンスを失い、自らの力のなさを痛感しながらも声をあげ続けるイノ。校長たちが移送される際に抗議活動をする人に交じり、イノは叫び続けます。

イノが去った後も、子どもたちの支えになるユジン。そしてイノは街を歩きながら、事件の起きた街の観光誘致広告を見つけ、眺めています。「ここに遊びに来て下さい」というメッセージを見つめながら、イノはこの後味が悪い事件を噛みしめる……。

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という終わり方です。とにかく緊迫感がある映画で、最後まで目が離せません。
イノとソジンがくっつくのかなあと思っていたのですが、恋愛要素はありませんでした。子どもたちの演技もうまいし(しかし、こういうテーマの作品にどういう気持ちで出演することになるのだろうかとは思う)、すべてがねじまげられていく裁判の様子も胸が痛い。
ただ、「耳が聞こえない」はずの少女が、聴力を振り絞って裁判をひっくり返すシーンはスリリングですし、意外性もあります。

法廷サスペンスが好きな人にはおすすめですが、後味の悪さもなかなかです。

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