「記憶探偵と鍵のかかった少女」

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2013年の映画「記憶探偵と鍵のかかった少女」。原題は「MINDSCAPE ANNA」なので、ちょっと前に流行した探偵小説シリーズを彷彿とさせる感じの原題をわざとつけたのでしょうか。ドンデン返しも、男を刺激するような賢くエロティックな美少女も、やや物足りない印象ではあります。

あらすじ

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「エスター」「アンノウン」のジャウマ・コレット=セラがプロデュースし、ペドロ・アルモドバル作品の助監督などを務めてきたホルヘ・ドラドが長編監督デビューを飾ったサイコ・サスペンス・ミステリー。主演は「ロビン・フッド」「キック・アス」のマーク・ストロングと、TV「アメリカン・ホラー・ストーリー」で注目されたヴェラ・ファーミガの21歳年下の妹タイッサ・ファーミガ。共演にブライアン・コックス。

ジョン・ワシントンは他人の記憶に潜入できる特殊能力で難事件を解決する“記憶探偵”。ある日、そんな彼のもとに拒食症に陥った16歳の少女アナのトラウマを探り出してほしいという依頼が舞い込む。数々の凶悪事件と向き合ってきたジョンにとって、それはいともたやすい仕事に思われた。富豪の一人娘アナは母親とその再婚相手の継父と森の中の大きな屋敷で暮らしていた。早速アナの記憶に潜入したジョンだったが、そこで彼を待っていたのは、性的虐待や殺人未遂といった血と暴力に満ちたあまりにも衝撃的な出来事の数々だった。やがて、ことの真偽を確かめるべく、関係者への聞き取りを開始するジョンだったが…。

http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=349468

人の記憶に入り込んで共有できる探偵という設定は面白いのですが(しかも、会社単位で組織化されている)、依頼者の女の子のほうがもっと上手(うわて)だった!とか、ラストのちょっとしたドンデン返しとか、オンナに騙されるオトコとか、既視感があるものも多いような気がする。
個人的には「鑑定士と顔のない依頼人」のほうがドギツイので好きです。

ネタバレ

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凄腕の記憶探偵、ジョン。しかし彼は妻を失ったトラウマ(浴槽の中で自殺)のせいで不安定になっており、仕事から離れている時期がありました。しかしそんな彼に依頼されたのが、アナという少女の記憶を探ること。
彼女は非常に賢い子でありますが、問題児でもあり、「食事をとらない」理由を探ってほしいという理由から両親の依頼が舞い込みます。ちなみに母は再婚しており、義父とは折り合いがよくありません。

アナの記憶に潜るジョン。「タンスに詰め込まれるアナ」「メイドと関係を持つ義父」「母にペーパーナイフを渡そうとして、傷付けてしまう」という記憶を垣間見てしまいます。しかし、ジョンに心を許すアナ。彼とアナは、サンドイッチを分け合います。

そして彼女の家にいた看護師のジュディス(アナの監視をしている女性)とデートをするジョン。しかしその帰りにアナを目撃します。しかし、そんはなずはなく、むしろジュディスは誰かに家の中で突き落とされます。それをアナのせいだというロバート。その一方、アナによると、義父のロバートとジュディスは関係を持っているよう。
ジュディスはなぜ嘘をついているのか?それとも……?

アナの過去。
教師にセミヌード写真を撮らせており、同級生3人の殺害未遂にも関わったと言われている問題児です。
しかし彼女からすると女子校でのいじめのターゲットになっており、彼女たちが飲酒をしていたことを隠したおかげで逆に仲間入りすることができたそう。
しかし、ジョンはその記憶がニセモノではないかと疑います。
「時計が動いていなかった、だからニセの記憶だ」
「あの時計はずっと止まっていたの、本当よ」とほほ笑むアナ。

セミヌード写真を撮影した教師は、性犯罪者として逮捕されています。彼は「アナにはめられた」ことを主張しています。

いじめの首謀者であるスーザン・メリクにも会いに行くジョン。彼女たちは寮の自室でお茶会を開いていて、そこにアナもおり、そのカップのなかに毒物が混入されていたというのです。彼女もまた、アナのことをおかしいというひとりです。

ジョンはたびたびアナの亡霊を見るようになります。
また、ジョンはアナの記憶の中で、自分の上司であるセバスチャンが彼女に性的ないたずらをするところを目撃。セバスチャンを問いただすジョンですが「そんなことがあったらこの依頼をお前にふらない」と一蹴されます。

“セッション”(相手の記憶に潜る)をしていても、先に目覚めて待っているアナ。こんなことができる人は、他にはいなかったのですが……。

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アナのセミヌード写真を調べるジョン。するとダウンロードファイルが表示され、ジョンはそれをクリックしてしまうのですが、彼のパソコンにはどんどんとティーンエイジャーのヌード写真が勝手にダウンロードされていきます。また、仲のいい生徒として記憶に登場した女の子が、現実(卒業アルバム)では違う名前だったことも判明。
何かがおかしい。

ジョンはアナの家に向かいますが、母も義父も既に何かに襲われて死亡しており、彼は監視ルームに閉じ込められてしまいます。なんとかアナを追いかけるジョンですが、警察が到着。アナは逃げてしまい、ジョンは逮捕されます。
彼はロリコンの罪を着せられ、アナに恋して両親を殺したんだろう!とかムチャクチャなことを警察に言われます。両親殺しの罪を擦り付けられたジョン。彼女から「私の生家の鍵だから持っていて」と渡されたものも、実は彼が閉じ込められた監視ルームのものだったことがわかります。

と、ここでジョンが眼を開けます。実はジョンの今までの記憶を、別の記憶探偵が調査していたのです。
(正直、このオチで終わるのかと思っていたけど、やはりこういう展開があるんですね)

逃亡を続けているアナ。彼女はバラと写真をジョンに送り、「ありがとう」(おそらく、家族から解放してくれてありがとう、の意)とメッセージを送ります。
ジョンはアナに利用されていたのです。ニセの記憶を見せされ、ジョン自体がコントロールされていたのです。彼のトラウマである妻の死すら利用されていました。
しかしこの経験を通してジョンは妻との思い出のペントハウスを売り、新しい一歩を踏み出します。そして、ジョアンナをデートに改めて誘うのです。

しかし、自分の両親を殺したという罪の部分をさらりと描いているのがなんだか違和感があるっちゃあるし、「賢い」と強調されまくっているわりにはイマイチ賢さがよくわからない。ただし、やたらと絵がうまい子どもはサスペンスで鬼門だというあるあるがまた実証されてしまったわけですが。まあ、絵がヘタすぎて怖いパターンもあるので一概には言えませんね。