「ザ・リッパー」

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1982年の映画「ザ・リッパー」を見ました。ニューヨークが舞台だからアメリカ映画かと思いきや、イタリア映画。あのルチオ・フルチが監督なのであります。しかし、この映画の犯人の大前提が非常に面白い。ふる~い映画なのですが、あまりの設定にズッコケすぎてムチウチになりそうです。

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あらすじ

ニューヨークで発生する女性の連続殺人事件。
担当警部は目撃証言からある男を容疑者にあげるが、その男は死体になって発見される。
唯一生き延びた女性の前に、男はまた現れるはずだと警部は考えるのだが―。

ネタバレ

女性の連続殺人事件の犯人を探すというわかりやすい話です。途中で警部も抱いていた売春婦が殺されたりする描写もあるのですが、これってありなのかしら。警察官ってそういう、性のモラルに関してはどうなってるんですかね。警官の知り合いいないからわからないや。まあ、時代も国も違うからなあ。何とも言えないか。

冒頭は、犬を散歩させていた老人視点。突然犬が女性の手をくわえてもどってくるという仰天オープニングです。
ここですぐに主人公の警部が登場しますが、目撃者のババアの話が長すぎて心が萎えます。

そして次の被害者もすごい。ニューヨークの自転車乗りの女性がフェリーに乗るのですが、この直前に車の運転手と喧嘩になります。車と自転車が接触しそうになって「家でじっとしてろバカ女!」「うるせぇクソ男!」みたいなやりとりがあります。なんとも心がすさむやりとりである。
この女、後でフェリーのなかで件の車を見つけて「SHIT」とルージュでいたずら書き。まさにルージュの伝言やんけと思っていたところで、殺人鬼に襲われます。
ボーボーいう汽笛で悲鳴が聞こえず、殺される女性。

警部はこの事件の解決のために心理学者の助けを借りますが、「30代のニューヨーカーでインテリタイプ」と分析。こちらとしては犯人はこの心理学者なんじゃねえだろうなと思ってみていたのですが、ハズレでした。ちなみに死体はだいたいがおちち丸出しなので、男性にはたまらないかもしれない。これもまた、この時代のホラーの醍醐味といった感じですね。

ちなみに、この犯人の特徴。それが「アヒル声」で犯行に及び、かつ電話をかけてきているということ。
ア、アヒル声……もしかしてドナルド○ック先輩のことかしら?大人の事情でこうなってるの?それにしちゃあ、モノマネが低レベルでびっくりします。

ここから突然、「女性のライブセ○クス」をウリにした風俗の中のシーンに飛びます。いわゆる、舞台のうえで本番が行われる風俗なのですが、これが非常に生々しい。素舞台で黒人男性と白人女性が交わっているのですが、それを見ている上品な淑女。しかし前列に座って突然ひとりでモニョモニョしだすので、見ている側は大変に気まずい。
そして、舞台上の白人女性は素っ裸なのですが、腕時計だけははめているのが気になる。残り時間を自分で確認するのかしら?まあ、袖から「あと5分!」とかカンペが出ていたらヤダよね。気が散るというか。
このショーが終わると、客席のみんなが拍手します。みんな真顔なのでちょっと笑った。
この舞台に出ていた白人女性も殺人犯に襲われるのですが、割れた瓶でマタをぐりぐりされるのが大変に痛そうです。

それにしても、やたらと警部に電話をかけてくる犯人なのですが、天才心理学者によると「頭がいい」「警部に恨みがある」「注目されたい」など、私でもできそうな分析が飛び出します。

そしてエッチな舞台を見ていた上品なご婦人ですが、この人と旦那さんのシーン。どうやらかなり変わった性癖をお持ちのようで、嫁がいろいろ外でオイタをしてきた際の録音を聞くのが旦那の趣味らしいです。
また出かける夫人。今度は下町のチンピラに絡まれて、テーブルの下で、足でもって下半身をまさぐられます。しかし途中でテーブルをよけてこの醜態をあらわにする男たち(といっても他に客がいるわけではない)。恥ずかしくて立ち去るご夫人です。ナンダコレ。

ここでようやく生き残りの被害者が出てきます。彼女の名はフェイ。フェイはすごくかわいらしい子なのですが、地下鉄で犯人に襲われたもののなんとか生き残ります。
それでも悪夢にうなされ、映画館でまたぐらに手を突っ込まれる夢を見て飛び起きます。フロイトに分析させたらこの女子、すごいトラウマを抱えていそうである。
彼女にはボーイフレンドがいますが、果たして彼は犯人から彼女を守れるのでしょうか?と言いたくなるような草食系男子です。

警部は犯人を絞り込み、指のないギリシア人の男が犯人ではと確信します。
しかし、そのころ前述の変態ご夫人はこの男に拘束され、さんざんいたぶられた後でボロボロ。ニュースの報道でこいつが犯人だと知り、慌てて逃げますが、犯人に刺されてしまいます。
奥さんの痴態テープを聞きながら涙を流す旦那。感動スルナー(棒)。

フェイは退院して彼の家に逃げ込みますが、指のない男がこの家までやってきて彼女を殺そうとします。なんとか逃げ延びる彼女。
警部は彼女が嘘をついているのではないか、となんとなく思います。その勘は当たるのか?といっても、こういう勘が外れることってあんまりないですよね。

警部のおなじみの風俗嬢をカミソリで切り裂き、犯行を見せびらかす犯人。
でも指のない男は犯人ではありませんでした。
もうこのへんで「他に選択肢がないじゃん」という理由から犯人がわかりますが、それはフェイのボーイフレンド。彼がフェイを襲っているところを、有無を言わさず銃殺する警察。
顔がぱーんとはじけるカレ。この頃のホラーは、顔がはじけるのがオチだったのでしょうか?

実はフェイは彼が怪しいと気が付いていたのです。
たまっていた病院の請求書。この請求書の中身を確かめるために病院に行ったところ(個人情報……)、彼が実は子持ちであることがわかります。
さらに部屋にあったナイフがかけており、犯行現場に残っていたナイフの傷跡(犯人は犯行の前後に、ナイフを周辺の壁などにガツガツ当てるクセがあった)と一致したこと。
病院にいる娘のスージーと話す時に、アヒルの声で電話していたこと。
これらが彼が犯人だということを示していたのです。

フェイのボーイフレンドは非常におとなしい性格でしたが、トラウマから二重人格のように女を殺してまわっていたリッパーだったというエンドでした。
こうやって振り返ってみると、ドナル○ダックなりきり殺人鬼もさることながら、後付けの理由が多いわ、夫人の御乱交ぶりが物凄いわで、何だか知らないけれど名作を見たような気持ちに浸れるのであります。