「アンティーク ~西洋骨董洋菓子店~」

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2008年の韓国映画「アンティーク ~西洋骨董洋菓子店~」を見ました。よしながふみさん原作で、ドラマ化やらテレビアニメ化やらされている作品。「大奥」にならんで、ファン以外にもわかりやすい代表作とされている印象。ってくらい、よしながさんの作品はどれも面白いのですが、この作品は人間ドラマに加えてサスペンス風味もあり、非常に面白い。
それだけに、ドラマ化やらされても原作を超える印象がなさそうと思っていたのですが、この映画に関してはけっこう原作の持ち味が出ている気もする。ただ、ラストは原作と少し違います。

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あらすじ

よしながふみの人気コミックを「少女たちの遺言」のミン・ギュドン監督が映画化した韓流ドラマ。小さな町の洋菓子店を舞台に、そこに働くイケメン4人が織りなす人間模様を、謎の誘拐事件を絡めて描く。主演は「魔王」のチュ・ジフン。

甘いものが大嫌いなジニョクは、突然会社を辞めると洋菓子店を始める。古い骨董品屋を改装したその店“アンティーク”は、腕は一流だが行く先々で恋愛トラブルを起こす魔性のゲイ“ソヌ”、元ボクサーの見習いパティシエ“ギボム”、不器用なウェイター“スヨン”の3人を迎え、順調に船出する。そんな中、町で連続誘拐事件が発生し、それとともに次第にジニョクの悲しい過去が明らかとなっていくが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=332424

登場人物

ギニョク:突然洋菓子店を始めたオーナー。ある過去を持ち、そのせいでケーキが大嫌い。ソヌとは同級生であり、かつて彼の告白を踏みにじったことがある。
ソヌ:「魔性のゲイ」であり、天才パティシエ。
ギボム:ソヌの味に惚れ込んだ元天才ボクサー。生意気。
スヨン:ギニョクの面倒を見るため、現れた青年。

この映画は、かつて自分を誘拐した犯人を捜すためにケーキ屋を開いた男・ギニョクが主人公。自分が誘拐された時と同い年の少年の誘拐事件が多発し、その少年が死ぬ直前にギニョクの店のケーキを食べていたことがわかります。果たして、かつての誘拐事件と現在発生している誘拐事件は、つながっているのか―!?
そして彼は、犯人を捕まえることはできるのか。

前半は奇妙な人間関係が織りなすケーキ屋の人間模様がテーマなのですが、後半はサスペンス風味。といっても、原作と比べるとやはり省略されているところが否めないのですが、テレビドラマ版は未見なのでどうなんでしょうかね。原作がとにかくおすすめなので、漫画は必読です。

全体の流れはそのままに、ラストだけが改変されている印象。

ネタバレ

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今回はざっくりと箇条書きで。

・高校の卒業式の日、ソヌに告白されるも口汚い言葉で振るギニョク
・時が経ち、ケーキ屋を開店することになったギニョクだが、その前に現れた天才パティシエはソヌだった
・ソヌはギニョクの顔を覚えていなかった。改めてお互いを認識して、店をオープンする
・だが、当たり前だがなかなか儲からない

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・元天才ボクサーのギボムが現れ、ソヌの弟子に。カフェやケーキ販売のほうの店員が全然見つからない
・スヨンも現れる。徐々にケーキ屋も軌道に乗る
・ソヌ、スヨンにちょっかいを出すが、すれ違いのまま終わる
・ギニョクの親と、ケーキ屋の常連客がはちあわせして気まずいムードに。
常連客は実はギニョクの誘拐事件を担当した刑事だった
ギニョクの誘拐事件について、みんなが知るところとなる

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(腐女子の方でも「三次元は認めない派」はいるのだろうか?)

・そこに、ソヌの元恋人で天才パティシエのフランス人が現れ、彼を引き抜こうとする
ソヌはどうするのか?
・少年の誘拐事件が連続して起こっている
その少年の胃の内容物から、ギニョクの店のケーキが浮かび上がる
・ソヌと連絡がとれなくなる。彼はフランス人と喧嘩して家から出られなくなっていた。
ソヌは本当はやめるつもりがなかったことを告白、ギボムを立派な職人に育てたいことをフランス人にも伝えて彼を送り出す

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(この写真の内装でカラオケパセラの店内を思い出したのは私だけ?ハニートースト食べたくなってきた)

・憔悴した女性が店にやってくる
親切に家まで送ったギニョクだが、違和感から家に上がり込むと、そこには誘拐された少年がいた。
ただし、それは昔彼を誘拐した犯人ではなかった。
・事件は無事解決した。
ギニョクを昔誘拐した男も、死んだ息子の過去を引きずっていた(そのせいでギニョクを誘拐した)が、そこから脱却して引っ越しをする決意を固める。
再会する二人。なんとなくお互いに気付いたような、気付かないような雰囲気が残る。

ここで、原作では「犯人が捕まったのにやはり悪夢にうなされる。何をしても、どうやってもそこからは逃れられないんだと気が付き、主人公は逆に少しすっきりとした気持ちになる。そしてまた、一日が始まる」というようなオチなのですが、映画では「犯人が捕まり、すっきりと目覚める主人公。足取りも軽く仕事に出かける」という、どこをどうしたらこういうオチになったんだろうという感じ。
ラスト間際まではよくまとめたなあと思っていたのに、ラストでずっこけます。
どう忘れようとしても、逃れようとしても、トラウマはそう簡単にはなくならない。それでも人間は図太く生きていくものだ、みたいな教訓を勝手にいただいていたのですが、この映画はあっさり立ち直るのね。
あと、あんまりケーキがうまそうじゃなかったのも悲しい。